企画背景:地域社会の現状
1.島民䛾交流を難しくさせる地理的・気象的条件:全面積の9割が山岳部であり、集落を行き来する手段が島を
周回する県道に限られる。どこに行くにも自動車を使用しなければならず島民は苦労を強いられています。バス
の本数は少なく、屋根のないバス停も多く、特に交通弱者にとっては雨の日は行動が制限される状況です。
2.気象条件・自然災害に左右される観光産業:近年の気候変動を背景に、特に2019年には記録的豪雨にみま
われ、これまで以上に災害に対する警戒レベルが上がっています。本来であれば雨の日の屋久島を体験するこ
ともエコ・ツーリズムの醍醐味ですが、いったん雨が強まると野外では活動継続が難しくなります。自然災害など
の情報が島外に発信されることで来島者数が激減しています。
3.自然の恩恵を誰が享受しているか:島内には自然豊かな遊び場がたくさん点在しています。安全なところもあ
りますが、よく見ると大人も子供も安心して遊べる場所がとても少ないことがわかります。ネイチャーガイドを頼む
観光客は雨天でも楽しめるアクティビティーを体験できますが、屋久島で生活する住民、特に子供達には、その
ような有料のサービスを楽しむ機会はなかなかありません。
4.観光と生活の不均衡:インフラ・設備投資など:高速船就航や世界自然遺産に登録されたこともあり、一時
屋久島には年間約 30 万人もの観光客が訪れるようになりました。町政も観光産業の振興に力を入れています。
しかし生活インフラへの設備投資などを見てみると、老朽化で使用できない遊具が目立ち、都市部のように雨の
日でも家族で楽しめる娯楽施設もほとんどありません。観光客と島民が交流する空間も企画も非常に少ない状
況です。
以上、生活者の立場で島内を眺めると、何をするにも自然に左右されてしまう現状と、集落間のアクセスが悪い
ため、島内の一体感が生まれにくい土壌が見えてきます。また、観光セクターとの接点も少なく、自分たちは郷
土やアイデンティティをアピールする機会がないため、開かれた地域コミュニティーとしての発展が難しい現状が
見えてきます。
調査内容の具体的な活動
1)仮説検証䛾ための調査
アンケート調査:本事業䛾構想について䛾興味・関心、および生活面における「雨」の影響や問題意識の把握
を目的に、屋久島町内の小・中学校およびその保護者を対象に雨の日の過ごし方や遊び方、雨䛾イメージなど
についてアンケート調査を実施しました。
また、コミュニティやエコ・ツーリズムの持続可
能性と雨との関係については問題意識を把握するために、屋久島の観光産業の主要なステークホルダーである
島内ガイド業従事者 100 人を対象にアンケート調査を実施します。
調査項目の内容や形式については事前に環境計画や環境社会学を専門とする研究
者との議論を踏まえて設計しています。
フィールド調査:プロジェクトの初期段階に、屋久島䛾島内にある公共施設(自然館・博物館・公民館、公園・遊
び場など)の雨天時の利用状況、遊休施設の視察調査を行い、同時に、島内の各集落を回り、子どもたちの遊
び場や島内スポーツ少年団の雨天時の対応についても住民や当事者から聞き取りを行っています。
2)ステークホルダーとの関係構築
本事業の問題意識の共有と協力者の掘りおこしを目的に、島内ガイド業従
事者についてはガイド協議会の、児童・生徒については学校関係者の、保護者については PTAの、集落の住
民について区長会の協力を仰ぎ、屋久島の将来と雨をテーマにグループインタビューや「哲学対話」のワーク
ショップを開催する予定です。対象者のプロジェクトメンバーが居住する集落、小学校区などを第1の候補と考
えています。
3)パイロット事業䛾実施
アンケートの回収と解析結果を参考に、本事業の構想と計画について再検討するプロ
ジェクト会議を開く。活動プログラムの立案、そのための協力者へのお願いと施設・場所の確保を行う。必要に応
じて、類似の事業に取り組む島外の事例の視察調査を行います。子供から大人まで、パイロット事業の参加者
へのインタビューあるいはアンケート調査を実施して今後の事業展開の方向性を検討し、教育委員会や町報を
通じて広く島内に本事業の取り組みを報告します。
企画責任者:加藤朗史
問い合わせ:info@greenmount.jp
雨の日を想うコミュニティづくりでは島内の協力者を募集しています。
雨の魅力を掘り起こし、雨に強いコミュニティづくりを目指しています。
興味のある方は上記アドレスまでご連絡ください。